私は映画館で映画を観るのが大好きです。
それも、シネコンなんかでわいわいとではなくて
大げさな設備も快適なイスも何もない、でも街に根付き愛されてきた、
たくさんの人達にたくさんの夢を与えてきたような
そんなひっそりとした映画館で、です。
そしてそんな映画館で映画を観るのは
街に愛されるレストランで食事をすることととっても似ている、と思うのです。
いま、映画は本当に何処ででも気軽に楽しめるようになっています。
インターネットで気軽にダウンロードできたり、
わざわざ買ったり借りたりしなくても、自宅に届けてくれるサービスもあります。
ホームシアターを作って、誰にも邪魔されずゆっくりと映画を楽しむこともできますし、
お風呂の中や車の中ででも、すぐに映画の世界に浸ることができます。
そんな中で映画や映像そのものの価値もどんどん下がっているように思います。
新作映画のDVDが数千円で売られたり、
無料でダウンロードできちゃったり、
中古でものすごく安くビデオが手に入ったり・・
こんな時代に、あえて1800円払って映画館で映画を見る価値ってどこにあるのでしょうか。
私はそれは「非日常のワクワク感を楽しめる」こと。
これにつきると思っています。
10歳の時、初めて映画館に連れて行ってもらいました。
小さな街にある、小さな劇場でした。
もちろん映画への期待もあったのですが、
それ以上に私をワクワクさせたのは、「映画館」という特別な空間でした。
来る日も来る日も、同じようにフィルムがくるくる回る。
来る日も来る日も、同じ時間に正確に、ただ映画が上映される。
映画を観る人のためにだけ提供される場所、提供されるサービス。
でも、訪れる人にとってはそれぞれにたった1日だけの大切な時間。
その数時間で感じて、得て、学んで、満たされる・・
それだけで元気にもなれるし、優しくもなれるのです。
たったその数時間だけで。
19歳になって、私は迷わず映画館でのアルバイトを選びました。
「ワクワクする非日常」を提供する為に。
いろいろあって今の仕事を選びましたが、
その考えは今ももちろん変わっていません。
レストランという空間も、映画館と全く同じだと考えているからです。
美味しい食事を期待してワクワクしてやってくるお客様に、
料理や接客サービスはもちろん、
ワクワクをもっと掻き立てる「特別な空間」を提供すること。
店のスタッフはただいつもどおり店にいて、
ただ正確に、ただ店に食事をしに来る人のためにサービスをするだけ。
でも訪れた人にとっては、一生忘れられない場所になったり
食事をするだけの数時間で何かを感じたり得たり、喜んだり、満たされたり・・
そして映画と同じで、元気にもなれるし、優しくもなれる。
レストランは、そんな素晴らしい舞台になるのです。
こんな誇らしい仕事はない、と思いませんか?
私は映画館で映画を観るのが大好きです。
そして、レストランで食事をするのが大好きなのです。
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